さっくりわかる教育トレンド「教員の働き方改革」
記事更新日 2024.01.30

さっくりわかる教育トレンド「教員の働き方改革」

近年教員不足と教員志願者の激減が問題になっています。その背景には教員の過重労働などの問題があり、「教員の働き方改革」が求められています。

教員の働き方改革とは

教員の働き方改革は、教員がより効率的に業務を遂行し、よりよい教育を行えるようにする取り組みです。この改革が求められるようになったのは、教員の過重労働など、労働環境の悪化によります。2018年に行われたOECD国際教員指導環境調査(TALS2018)の調査でも、日本の教員は世界の中でもとびぬけて労働時間が長いことが明らかになりました。
教員の仕事内容は授業準備、採点、保護者との連絡・面談、部活動指導など多岐にわたるため、職務のすべてを勤務時間内で終えることは難しく、残業が常態化していました。そして、その残業代については公立学校の教員は給特法により、給与の4%の残業代、すなわち「教職調整額」が支払われるのみで、それ以上は「自主的に行っている」残業(サービス残業)とみなされてきました。
このような状況を改善するために、「教員の働き方改革」が求められるようになりました。

「教員の働き方改革」で示された2つの改善策

「教員の働き方改革」では大きく2点の改善策が提示されました。
1点目は労働時間の管理です。長時間労働を防ぐために、教員の労働時間の上限を設定して管理を徹底することが求められるようになりました。具体的には、2019年に「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」が策定され、このガイドラインにおいて勤務時間外の労働の目安は、1ヶ月で45時間以内、1年間で360時間以内とされました。
教員の仕事はマルチタスクかつ無限定・無定量の仕事と言われており、やろうと思えばきりのない仕事です。各学校でノー残業デーを作ることや、部活動指導員やスクールサポートスタッフなどの外部人材の活用、ICTの活用による効率化・省力化などを行い、適切な労働時間にできるよう取り組んでいく必要性が示されています。
2点目は学校や教員が担う業務の明確化や適正化です。日本の学校は「知・徳・体」、すなわち教科指導、生徒指導、部活動を一体的に担う存在であり、地域コミュニティの中核としても機能する存在です。欧米などでは学校は「知育」を中心に行い、「徳育」や「体育」は地域が中心になって行われるのに対し、日本の学校はそのすべてを担ってきたことで、教員の負担増につながっていると指摘されています。
2019年に文部科学省はこれまで教員が担ってきた業務を整理し、「基本的には学校以外が担うべき業務」、「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」があるとしました。
例えば、登下校時に児童生徒の安全を見守ることや地域ボランティアとの連絡調整などは「学校以外が担う業務」、休み時間の対応や校内掃除、部活動などは「必ずしも教師が担う必要のない業務」、給食時の対応や支援が必要な児童生徒・家庭への対応などは「負担軽減が可能な業務」となっています。
このように今まで教員が引き受けてきた数多くの業務を整理し、外部人材や地域のサポートを得ながら運営していくことで教員の業務負担を軽減させることができます。

教員の働き方改革のこれから

教員の働き方改革はまだまだ道半ばですが、各学校でそれぞれの学校が抱える課題を明らかにし、具体的なアクションに移す姿が多く見られています。
埼玉県教育委員会ではサポートスタッフとして「業務アシスタント」を採用し、教職員の事務負担の軽減が図られています。また、首都圏の私立学校でも定時退勤を日常化したり、部活動の外部委託を行ったりする学校も出てきています。
このような取り組みを今後も続けていけば、教員の労働環境はより改善されていくでしょう。学校求人を探す際にも「教員の働き方改革が行われているかどうか」をポイントに探していくと、より働きやすい職場を見つけやすくなります。

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