さっくりわかる教育トレンド「部活動の地域移行」
記事更新日 2024.01.30

さっくりわかる教育トレンド「部活動の地域移行」

教員の長時間労働を引き起こす一つの要因として部活動指導が挙げられます。
この部活動指導を地域に移行させようとする動きが今まさに始まっています。

部活動の地域移行とは

部活動の地域移行とは、これまで公立の中学校・高校で教員がほぼ無償で担ってきた部活動を、地域のスポーツクラブなどに移行することを言います。
スポーツ庁と文化庁は、2022年12月に策定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」において、2023年度から25年度の3年間を「改革推進期間」と位置づけ、部活動改革を進めていくとしています。
はじめに、公立中学校の休日の部活動についての地域移行を段階的に行い、平日の部活動においても可能な限り地域移行を早期に実現することを目指すとされました。
私学や高校については部活が学校の特色ともなっている場合もあるため、実情に応じて取り組むこととなっています。

部活動の地域移行のメリット

部活動の選択肢が広がる

少子化に伴って小規模となっている学校では、野球やサッカーなどのチームスポーツを行うことが困難になるケースも出てきています。また、部活動の種類が限られて、本当は違う部活動がしたいけれどもその学校に無いため、仕方なく違う部活に入るという選択をしている生徒もいると考えられます。
地域にスポーツクラブを作り、そこに各学校の生徒が集まって一緒に練習をすることで、部活動の種類の多様性が保たれ、生徒が希望する部活動に参加しやすくなります。また、今その部活動が無くても、仲間と指導者を募れば新しい部活動を作ることが可能になるでしょう。他の学校の生徒と一緒に活動を行うことで、多様な友達とかかわる機会も生み出すことができます。

専門的な指導が受けられやすくなる

令和4年度の教員勤務実態調査では、担当する部活動に関して、「指導可能な知識や技術を備えている」と回答した教員は48.9%と半数を下回りました。この結果から、自分の部活動経験を活かしたいが、学校事情で違う部活の担当をしている教員や、担当する部活の経験はないが、他に担える人がいないので仕方なく担当をしているという教員も多く存在している可能性があります。
地域移行することによって、地域クラブに属する専門的指導者や公募による地域の専門家の指導を受けられる可能性が広がります。

教員の負担を減らせる

同じく令和4年度の教員勤務実態調査で、教員の約8割が部活動の顧問を担当しており、部活動の半数以上が週5日以上活動していることが分かりました。
そして週に5日間部活動を行っている中学校教師の、平日1日あたりの在校等時間は「11時間11分」になっています。通常の勤務時間は7時間45分のため、超過勤務時間は「3時間26分」にもなっています。
土日の部活動も担当すると、超過勤務時間はさらに増えるでしょう。このことからも、教員が部活動の顧問を担うことによって勤務時間が大幅に増えてしまっている現状があることがわかります。
部活動を地域に移行することによって、教員が部活動顧問にあたる時間を減らし、教員の業務時間自体も軽減することができます。

部活動の地域移行のこれから

茨城県のつくば市では部活動の地域移行進めています。民間企業に委託する形のため、有料の事業になりますが、有料化に見合う人材を配置し、部活動の質向上も目指している点で、保護者からの不満も少なく移行できており、教員からの評価も高いようです。
部活動に積極的に関わりたい教員については、勤務ルールを変更してフレックス勤務を可能にしたり、兼業という形で関わったりするという案も出てきており、今後一層、教員の柔軟な働き方が可能になってくる兆しが見えています。

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