さっくりわかる教育トレンド「金融教育」
2022年4月からの新学習指導要領の中で高校の家庭科や公民科で、「資産形成」と「資産運用」について学ぶ時間が設けられました。成年年齢が18歳に引き下げられ、18歳から金融に関するさまざまな契約を行えるようになることから、金融教育の重要性がますます高まっています。
金融教育が導入された背景
金融教育が導入された背景の1つとして、年金問題が挙げられます。日本の高齢化率が28%を超え、超高齢化社会となっている今、老後資金をどのように確保していくのかが大きな問題となっています。 「老後2000万円」問題などとも言われていますが、定年後に公的年金だけで暮らすことは極めて困難な社会になっていることが事実です。
幼児期からお金や金融に関する教育が行われている欧米と比較すると、日本では金融教育があまり積極的に行われてきませんでした。そのため投資などで資産形成をする方法を知らない人が大多数で、金融資産は預貯金だけという人が多く存在しています。
現在世界的な物価上昇も起きており、お金を預けるだけではお金を増やすことができず、反対にお金の価値が減少してしまうという事態が起きています。「貯金しておけば安心」という時代ではなくなった今、「投資」などの資産運用を行い、お金を積極的に増やすという選択が求められるようになりました。
さらに、スマホの普及でインターネットが身近になった反面、特殊詐欺の手口も多様化しています。成年年齢が18歳に引き下げられたことで、18歳から親の同意なしにクレジットカードを作ったりローンを組んだりできるようになったため、金融の知識を持たない若年層が金融トラブルに巻き込まれる問題も生まれています。
以上のような背景により、金融教育の必要性が強く訴えられるようになりました。
金融教育は2005年頃からすでに始まっていましたが、実際の学習時間は2014年の段階で年に1~5時間ほど(中学3年生~高校3年生)に留まっていました。近年は教員や保護者側も金融に対する意識が高まったことで、2022年の新学習指導要領から「資産形成」や「資産運用」などの内容が盛り込まれ、金融教育をより充実させていく方向が示されました。
金融教育で学ぶ内容
これまでの家庭科で学ぶ「お金」に関する内容は、どちらかというと消費生活における注意点に主眼が置かれていました。「買い物をする際にどのような点に気をつければよいか」、「収入と支出のバランスをとることが重要」といった内容が多くみられていました。
今回の新学習指導要領では、中学校においては「クレジットカードの三者間契約」、高等学校においては「株式、債券、投資信託といった金融商品での資産形成の視点」などが盛り込まれ、預貯金や債券、株式などの金融商品への理解を含め、より積極的に経済の計画が立てられるように指導する内容になっています。
金融広報中央委員会では学校教育で行うことができる「金融教育プログラム」を作成し、授業で活用できるようにしています。
金融教育プログラム ─社会の中で生きる力を育む授業とは─|知るぽると (shiruporuto.jp)
「金融教育プログラム」の内容の一例を紹介します。
<金融教育で学ぶ内容例>
・家計管理とライフプランニング
・保険の仕組み
・資産形成とは何か
・金融商品の分類と特徴
・金融トラブルについて
金融教育は小学生ごろから段階的に学ぶ必要があるとされています。生活スキルとして最低限身に着けるべき金融リテラシーを「金融リテラシー・マップ」として金融庁が作成・公開しています。
金融リテラシー・マップ ~「最低限身に付けるべき金融リテラシー(お金の知恵・判断力)」の項目別・年齢層別スタンダード|知るぽると (shiruporuto.jp)
金融教育は児童生徒の生活とも深く関わってくる内容のため、家庭とも連携し、学習してくとより一層効果的に学ぶことができます。
金融教育のこれから
金融教育は、自分の高校卒業後の進学、住宅取得、老後・・・といった自分のライフプランを立てる中で、病気や失業などのリスクに対してどう備えれば良いのかを考え、生涯を見通した計画を立てられるように指導する構成になっています。お金を「自分の夢を実現させる道具」として捉え、上手に関われるようになることで、子どもたちの生き方の選択肢や可能性を広げることができます
現在、現場の教員が「投資経験がない」「金融の知識が少ない」ことで問題も発生していることから、金融教育を推進するにあたって金融機関の職員やFPなどの外部講師に依頼することも検討されています。
外部講師による授業も活用し、実践的な投資方法を学ぶ中で日本人全体の金融リテラシーを高め、各自が積極的に資産形成できるようになることが今求められています。