スクールロイヤー
記事更新日 2024.12.20

スクールロイヤー

スクールロイヤーとは

スクールロイヤーとは、学校・教育委員会・学校法人に対して、学校で発生するいじめ・不登校・障害・学校事故などさまざまな問題について助言・アドバイスをする弁護士のことです。これまでは各自治体に配置されている顧問弁護士が対応していましたが、近年学校や教育委員会において、いじめや虐待、保護者からの過剰な要求、学校事故への対応など、法務相談を必要とする機会が増えたため、専門的な知識を持った弁護士、スクールロイヤーを各学校に配置する方針が採られることになりました。
現在、いじめの認知件数は2024年現在約73万件、不登校児童生徒の数も約34.6万人と過去最多になっています。また、2019年に起こった千葉県野田市の女児虐待死事件では、学校に何度もSOSを出しながらも救うことができなかったという事実から、スクールロイヤーがより注目されるようになりました。
2018年1月に「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」が日本弁護士連合会から文部科学大臣に提出され、学校に対して弁護士が法的観点から継続的に助言を行う制度が必要であることが示されました。2019年9月には文部科学大臣がスクールロイヤーを全国に300人配置する方針を示しました。
スクールロイヤーが注目されるようになった経緯からもわかるように、学校にはいじめ・不登校・児童虐待・保護者からの過剰要求など、子どもやその保護者をめぐるさまざまな問題が押し寄せています。これらすべての問題を学校だけで対応するのは困難です。また、近年教育分野の法律も増えており、それらの法律を踏まえて業務にあたらなければなりません。
このような理由から、スクールロイヤーが必要とされるようになりました。

 

スクールロイヤーの仕事内容

スクールロイヤーの仕事内容には次のようなものがあります。

助言・アドバイザー業務

スクールロイヤーは学校に対して、法的な助言やアドバイスを行います。
例えば、いじめ防止対策推進法上の「いじめ」に該当するかどうかの判断や、学校事故が起きた際の法律に従った適切な対応などについて助言します。
また、アドバイスの際には違法・適法の判断のみならず、学校のアセスメント(見立て)とプランニング(計画)もサポートします。さらに、必要に応じてスクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)などと連携しながら対応することもあります。
できるだけ早期に学校関係者からの相談にのることで、法的課題の深刻化を防ぐことができます。

保護者との面談

保護者らが限度を超えた要求を繰り返したり、学校・教育委員会に対して危害を加えることを告知したりするような場合、スクールロイヤーが学校や教育委員会側の代理人として直接保護者らとやりとりします。
この他にも学校で日常的に起こり得る、難しい保護者対応にも、スクールロイヤーが立ち会って調整や仲介をおこなうことがあります。この場合、スクールロイヤーは必ずしも代理人としてではなく、専門家の立場から保護者や関係者に対して法的な知見を提供することもあります。

研修

教育現場で必要とされる法律の知識やスキルについて、教員や教育委員会に対して各種研修をおこないます。研修で扱われる内容は、いじめ防止対策推進法・個人情報保護法・著作権法など、学校現場に密接に関わる法律の解説や保護者対応の方法等があります。

出張授業

法律の専門家として各学校に出張して授業をおこないます。法教育・いじめ予防授業・消費者教育・ワークルール教育など、教育の内容はさまざまです。
出張授業と合わせて、学校側に予防的な教育や指導の重要性について助言を行い、今後の予防策の検討も行います。
また、人権を守ることやいじめの法律上の取り扱いなどについての資料作りや授業モデルの構築、教材開発などを担当教諭と相談しながら行います。

 

スクールロイヤーのやりがい

スクールロイヤーは、法律家であると同時に、教育現場の一員として社会に直接的な影響を与えられる点が大きな魅力です。学校内で発生するいじめや不登校、虐待など様々なトラブルに対応し、児童生徒の心身の健康や安全かつ公平な学びを守る役割を担うことは、大きな社会的意義を感じられるでしょう。
また、教育現場の特性を理解し、教職員と連携しながら問題解決に取り組むことで、教育的視点を取り入れた解決策を模索できます。このプロセスを通じて、教育と法律が交わる場での独自の専門性を発揮することもできるでしょう。
法律的サポートを提供するだけでなく、学校での問題を予防し、生徒たちにルールや権利の重要性を教育する場面もあるため、子どもたちが将来社会に出ていく際に法や規範を尊重する姿勢を育む一助となれる点でも、非常に意義深い仕事と言えるでしょう。

 

スクールロイヤーになるには

教育に関心があり、弁護士資格を取得していれば、スクールロイヤーになることができます。弁護士資格を取得するには、司法試験に合格することが必要です。司法試験を受験するためには法科大学院(ロースクール)を卒業するか、予備試験に合格する(合格率3%)必要があるため、弁護士に合格することは非常に狭き門と言えるでしょう。
また、スクールロイヤーが学校教育制度に関わる弁護士である以上、学校教育の現状や今後の方向性についてきちんと理解しておく必要があります。
実際に弁護士と教職員免許の両方の資格を取得し、学校現場で教壇に立ちながら学校や自治体のスクールロイヤーとして活躍している先生もいます。今後はこの先生のように職務経験や教育学の学位を有する、教育現場を熟知したスクールロイヤーが多数生まれるかもしれません。

(作成:お仕事ジャーナル編集部S)

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