学校のお仕事図鑑「生徒指導の仕事」
記事更新日 2024.05.25

学校のお仕事図鑑「生徒指導の仕事」

生徒指導とは

生徒指導とは、社会の中で自分らしく生きることができる大人へと児童生徒が育つように、その成長・発達を促し支える意図で行われる教育的働きかけのことです。学校生活の中で、児童生徒が自らそれぞれの社会的資質を伸ばすとともに、さらなる社会的能力を獲得し、それらの資質・能力を社会の中で適切に生かして、自己実現を図りながら自己の幸福と社会の発展を追求していけるような大人になることを願って行われます。このような児童生徒の自発的かつ主体的な成長・発達の過程を支援していく働きかけの全般を、「生徒指導」と呼びます。

 

生徒指導種類

生徒指導はその内容や対象によって大まかに4つに分かれています。

発達支持的生徒指導(対象:全ての児童生徒)

自己理解力や自己効力感、コミュニケーション力、他者理解力、思いやり、共感性、人間関係形成力、協働性、目標達成力、課題解決力などを含む社会的資質・能力の育成や、自己の将来をデザインするキャリア教育の推進などを行います。
例えば国語や道徳の授業などで他人を傷つけない言語表現を学習することも発達支持的生徒指導に含まれます。宿泊学習や体育祭・学園祭などの学校行事はもちろん、教科の学習の中にも生徒指導の要素が含まれるため、それらと関連付けながら働きかけます。

課題未然防止教育(対象:全ての児童生徒)

いじめ防止教育や自殺予防教育、薬物乱用防止教育や情報モラル教育などは学校の年間指導計画に位置付けられており、毎年実践されます。これらの課題について全校に周知し、理解を促すことで、未然に問題を防ぎ、予防につなげます。

課題早期発見対応(対象:課題の前兆行動がみられる一部の児童生徒)

ある時期に成績が急落したり、遅刻・早退・欠席が増えたり、身だしなみに変化が生じたりした児童生徒に対して、いじめや不登校、自殺などの深刻な事態に至らないように、早期に教育相談や家庭訪問などを行います。早期に発見するためにも日々の児童生徒の観察や見取りが大切です。

困難課題対応的生徒指導(対象:深刻な課題を抱えている特定の児童生徒)

いじめ、不登校、少年非行、児童虐待など特別な指導・援助を必要とする特定の児童生徒を対象とします。
学級担任による個別の支援では対応が困難な場合が多いので、生徒指導主任や教育相談コーディネーター(教育相談担当主任等)を中心にした校内連携型支援チームや、校外の教育委員会、警察、病院、児童相談所、NPO等の関係機関と連携・協働したネットワーク型のチーム支援で対応することが求められます。

 

これからの生徒指導

生徒指導という言葉から、強面の生徒指導主任や厳しい校則などのイメージを持たれる人が少なくないと思います。このように一見マイナスなイメージを持たれやすい「生徒指導」ですが、本来の目的は、生徒が抱えている問題を「成長のチャンス」と捉え、未来に向けてよりよい方向に成長させていくことです。
2022年に改訂された「生徒指導提要」は、生徒指導の理論・考え方や実際の指導方法をまとめたものですが、今までの生徒指導に見られた「ブラック校則」とも呼ばれる、行き過ぎた校則指導について、「教員は校則を守らせることばかりにこだわらず何のために作られたのか理解・指導することが重要」であると記載され、「校則は学校内外の関係者が参照できるようにホームページ等に公開しておくこと」や、「制定した背景等についても示しておくことが適切」であり、「教育に適切か、変更する必要がないか、絶えず見直す」ことが必要だと明記されました。
児童生徒の学校運営への参画の教育的意義にも触れられており、これからの生徒指導では教師が一方的にルールを守らせるのではなく、児童生徒とともに学校の校則を見直し、共によりよい学校を作っていく中で児童生徒の社会的な成長を促していくことが求められます。

学校は児童生徒にとって小さな社会であり、実社会に出る前に様々な体験・経験やチャレンジができる貴重な場です。学校生活で起きる様々なトラブルや問題を児童生徒の成長のチャンスと捉え、共に解決していくことで児童生徒の社会的資質や社会的能力を伸ばしていくことができます。

 

【参考サイト】
生徒指導提要(改訂版):文部科学省
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