私学のユニーク先生インタビュー「大妻中野中学校・高等学校 吉名 晃一先生
記事更新日 2024.03.01

私学のユニーク先生インタビュー「大妻中野中学校・高等学校 吉名 晃一先生

実際に私学で働く先生に、お話をお伺いするコーナーです。
今回は、大妻中野中学校・高等学校 吉名 晃一先生に、現在のお仕事に至るまでのキャリア形成や、ユニークな授業展開に至る経緯、お仕事のやりがいや面白さについて、お話を伺いました。

のびのびと素直な子が集まる大妻中野

――貴校の特徴や生徒さんたちについて教えてください。

吉名先生 大妻中野の生徒たちは、素直で真っ直ぐな子ばかりです。先入観で人を決めることなく、自分の尺度をしっかり持ちながら柔軟に相手を受け入れる力を感じますね。だからこそ、この学校にはどんなタイプの子でも居場所がありますし、“出る杭”が打たれない、のびのびとした環境ができているのだと思います。
また、先生たちも仲が良く、結束力が強いです。とてもコミュニケーションが取れているので、学年、教科やクラブ活動を超えて共に取り組み、支え合いながら、生徒たちのためにより良い環境を用意しようという思いで結ばれています。

企業の研究職での経験

――教師になる前はどのようなお仕事をしていましたか。

吉名先生 食品業界で商品開発などを行う研究職として3年間働いていました。地方に本社があり、東京の事業部に所属していましたが、商品開発以外にも人材育成や顧客企業との交渉なども行なっていました。

――どうしてそのお仕事に就いたのですか。

吉名先生 実は、大学時代から教員を目指し、教職の免許も取り、採用試験の準備をしていました。しかし、4年生から始めた研究でその可能性に魅了されたのです。私が所属していた研究室はナノバブルというナノサイズの泡の物質を初めて発見し、浮力を受けずに水中で存在し続ける特徴をもち、植物の代謝に良い影響を与えることがわかりました。また、塩を吸着するという性質を利用して、塩害被害から農作物を救うこともできるのではと考えて研究を続けました。
修士課程を修了にあたり、研究のノウハウを企業ではどのように生かすことができるだろうかと興味を持ち、企業の研究職を探して就職しました。
教師になりたいという思いは残っていたのですが、様々な経験をしてからでも遅くはないと思っていました。

生徒の「わかった!」の瞬間の顔が忘れられず教員に

――教職へと転職したのはなぜですか。

吉名先生 学生時代の教育実習やアルバイトでの塾講師の経験から、生徒に教えることの喜びが忘れられずにいました。特に、生徒がわからなかったことが私のヒントや説明で「理解できた!」「閃いた!」という時の表情が、ずっと脳裏に残っていたんです。
企業での仕事は他部署とかかわることがとても多かったので、自身が学ぶこと、他人に教える機会はたくさんありましたが、大人相手ですし、わからないことを教えてもやりがいを感じるほどの感謝をされることはありませんでした。自分が頑張ったことがそのまま感謝の形で戻ってくる教育現場の素晴らしさをまた体験したいと、3年目に決意して、学校への転職情報を探し始めました。
当初は、教育業界から離れていたために最新事情や抱えている課題などを理解するのに時間がかかりましたが、情報収集や採用試験対策などの準備をし、共学の中高一貫校に採用され4年間働きました。その後、大妻中野へ転職をしました。私学は「建学の精神」や「校訓」がはっきりしているので、就職先を探すときにもとても参考になりました。

――「企業→教師」に転職した際に、企業の経験が生きていることはありますか?

吉名先生 顧客先とのやりとりや調整などの経験があったので、他の先生とのやりとりや保護者とのやりとりは抵抗なくできました。また、進路指導をする際に、大学の学部学科で学ぶ内容は会社の現場どのような形で発揮できるかといった大学進学した先の話まで自身の体験を踏まえて話をすることができるので、生徒たちにより先の将来をイメージさせやすいところにも生きてきていると実感しています。

――現在の1日のスケジュールを教えてください。

吉名先生 朝6時半には家を出て、7時半頃出勤します。生物室で飼っている生き物に餌をあげたり、生徒の質問に答えたり、授業準備したりして、8時15分始業です。担任クラスのショートホームルームをした後は、6時間目まで授業を教えます。1日4コマ程度ですが、空きの2時間は授業や部活、校務分掌の書類作成などの準備に費やし、15時15分で授業が終わると再びホームルームと掃除。放課後は、質問に来る子が多いのでそれに答えていると18時くらいになることも多いですが、質問が少なければ部活に向かうか、次の日の授業や実験準備をします。
昨年子どもが生まれたので、仕事が終わったら早めに帰宅して家族の時間を大事にするようになりました。

吉名先生

探究的な深掘り研究や教科横断の学びなど私学で働く魅力

――現在はどのようなお仕事を担当していますか。

吉名先生 高2、高3の生物の授業を行う以外に、生物部の顧問、高2のクラス担任、入試広報、そして学年の枠を超えた大妻中野独自の課題解決型プロジェクト学習「フロンティア・プロジェクト」の担当をしています。
授業では、目の前のテストや入試にばかり注力せず、学んだ知識をどう活用するかを考えていくことを大事にしています。教科書の内容も新たな研究や発見でこれから先にどんどん更新されていくので、生徒が暗記することに躍起になるのはもったいない。普段も、「教える」説明は授業時間の半分以内に抑えます。クイズ形式で前回の復習テストを生徒同士で競争しながら進め、そのあとはToday’s missionとして課題を出し、KP法を使ってグループごとにB4用紙2~3枚にまとめて発表してもらうようにしており、授業がとても盛り上がるようになりました。
フロンティアでは、毎週土曜に中2から高2までが縦割りで5つのグループに分かれ、中野の町というローカルと世界をつなぐ活動をSDGsの観点から進めています。所属している生徒たちは「共生社会」「ゴミ環境」「女性ジェンダー」「防災減災」「生物多様性」などに取り組んでいて、生徒たちが自分で課題を見つけ、解決に向けての行動をサポートをしています。

――教員としてのやりがいと今後の抱負を教えてください。

吉名先生 企業で大人ばかりの中で仕事をしていたので、最初は言葉遣いや若者の流行りなど、生徒との接し方に悩みました。教員になって1年目に(前任校で)副担任をしたおかげで教室を俯瞰的に見る経験ができ、少しずつ生徒たちとの接し方も慣れていった気がします。
また、大妻中野では1年目には週に1度研修を継続的に受けられるので、女子校の先生としての振る舞い方や学校の特色、オンライン授業のやり方まで詳細にわたって指導を受けることができ、とても学びになっています。
前職のやり方や経験をそのまま引きずることなく、未知なる場所に飛び込んでもそこでのやり方を学び、環境に慣れていくことが大事だと思っているので、常に挑戦と成長だと感じています。休みの日に動物園の下見に行くなど、仕事とプライベートの境は低くなりましたが、自分が楽しんでできています。
今後は「フロンティア・プロジェクト」もさらに深掘りしたいですし、他の教科と協力した展開もしたいです。
教師の仕事をしながら、探究心も満たされていて、日々成長できている気がします。

#プロフィール
吉名 晃一(よしな こういち)
理系国公立大学院修士課程修了。
食品会社の研究職として3年間勤務。教員に転職し、中高一貫校で4年間勤務した後に2023年4月より大妻中野中学校・高等学校。趣味は和太鼓。
#学校INFO
大妻中野中学校・高等学校
女子校・中高一貫校・高校募集なし
https://www.otsumanakano.ac.jp/
〒164-0002 東京都中野区上高田2-3-7
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