私学のユニーク先生インタビュー「育英西中学校・高等学校 下玉利香先生」
記事更新日 2024.08.19

私学のユニーク先生インタビュー「育英西中学校・高等学校 下玉利香先生」

今回は、育英西中学校・高等学校 国語科の下玉利香先生と湯川明子副校長をお訪ねし、現在のお仕事の面白さや大切にしていること、ご自身の学びや私学の魅力についてお話をうかがいました。

「自分で未来を切り拓く力」を育む

──貴校の特徴や生徒さんについて教えてください。

湯川副校長 本校は昨年40周年を迎えた、奈良県唯一の女子中高一貫校です。本学園は女子の裁縫学校から始まり奈良育英高等女学校を創立した歴史があります。学園創立の使命に立ち戻り70周年の年に設置されたのが本校です。近年は、中学では国際バカロレアMYPを導入し、高校では独自の探究学習を導入し、グローバル社会で活躍できる自立した女性の育成を目指して教育を行っています。

下玉先生 生徒は素直な子が多いですね。彼女たちと話していると「まっすぐに生きていきたい」という純粋さを感じ、それを励みに教員が頑張れる学校だといえます。

──今、学校ではどのようなお仕事を担当していますか。

下玉先生 私は担当教科の国語のほかに、特設Ⅰ類の主任や教育連携校の連携部長を担当しています。当校は大阪公立大学や立命館大学など公私立11大学と連携協定を結んでおり、その大学への見学会などを企画しています。最近では連携大学に進学する生徒も増えました。見学会ではその大学に進学している先輩に「高校時代に取り組んだ活動が大学生活にどうつながったか」を必ず話してもらうのですが、これが在校生の心に響いているように感じます。

湯川副校長 生徒が成長するためには、生徒の自立心を育むことは不可欠になります。
それには、生徒に寄り添いつつも叱咤激励しながら内面をしっかりと成長させることが重要です。下玉先生は、その生徒の内面にアプローチするスキルが高く、本校の教育の根幹となる部分に尽力していただいています。また、各学年のキャリア教育と進路に向けての指導もしていただいています。生徒の内面にアプローチすることは難しいですが、下玉先生のように、生徒自身の目標を常に明確にし、優しさと厳しさの両面を持って指導実践ができる教員は多くないと思います。

──特設コース今回は、育英西中学校・高等学校 国語科の下玉利香先生と湯川明子副校長をお訪ねし、現在のお仕事の面白さや大切にしていること、ご自身の学びや私学の魅力についてお話をうかがいました。Ⅰ類主任としてやってこられたことはどのようなことですか?

下玉先生 特設Ⅰ類は「自分が何をやりたいか」を考え、自分の進路を開拓していくコースで、私立大学の総合型選抜に対応できる資質と能力を育成します。
ここでは以前の学年主任や特設Ⅱ類での担任経験が活きていると思います。校内の成績が良い生徒であっても、自分に自信がなくて進路に対して安全な道を選ぶことがよくありました。この経験から、生徒がやりたいことを明確に持つことが最も重要だと感じています。その支援体制を整え、生徒が自信を持って踏み出せる環境づくりをしています。

 

校外活動を通じて教科授業の重要性を理解してもらう

──育英西中学校は、女子校初の国際バカロレア(以下、IB=International Baccalaureate)のミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)認定校となりましたね。

湯川副校長 IB教育は探究心、知識、思いやりに富み、より良いより平和な世界を築くことに貢献する若者の育成を目指したプログラムで、本校の教育理念である「豊かな教養と純真な人間愛をもって、社会に貢献できる女性の育成」とも合致します。教員は受けたことのない授業を構築していくわけですから当然苦労は多いと思います。先生方は校内外で多くの研修を重ねながら新しい授業作りに挑戦しています。

下玉先生 特設今回は、育英西中学校・高等学校 国語科の下玉利香先生と湯川明子副校長をお訪ねし、現在のお仕事の面白さや大切にしていること、ご自身の学びや私学の魅力についてお話をうかがいました。Ⅰ類では、本校独自の課題解決型授業「シナジータイム」を実施しています。その授業を担当されている教員は、生徒が議論を重ねてたどり着いた考えを行動に移すところまで指導されています。こうした学びにハマって大学主催のコンテントに参加したり、専門分野で活動される大人と接点を持つ生徒も出てきました。今後は活動を通した自身の変容を後輩に語ってもらう機会をつくっていきたいですね。
また、入試説明会やオープンスクールの企画は、入試関連行事実行委員会の高3生が中心となり行っています。ここでは自分の意見を通すためにはどうすればいいのか考え、その結果から「国語の授業で習ったこととつながっている」と気づき、教科授業の重要性を理解して、成績が伸びてきた生徒もいます。

授業では、自分の意見を誰かに伝える土台としての「国語力」養成を目指す。

 

毎日生徒に声掛け、愚直だけどそれが自分のやり方

──生徒と信頼関係を築くために、心がけていることはありますか。
下玉先生 学校にあるリソースを最大限活用するほかに、他の教員とタッグを組む、あるいは保護者を説得するために話し合いの場に同席するというように、ベストな形で生徒に寄り添うことですね。
湯川副校長 下玉先生は「このタイミングしかない」という頃合いを図って生徒にアプローチするスキルがとても高いです。タイミングを見極めることで生徒の悩みが解消され、良い方向に進んでいく。これはリーダーシップにおける重要な資質だと思います。

──そのためには、どれだけ生徒を見ているかが重要になってきますよね。
下玉先生 教員になったばかりの頃は失敗ばかりでした。「そんなつもりで言ったんじゃないのに」と思うことが続いた時に、先輩教員から「ひと目で全体を俯瞰できないのなら、自分なりのやり方を見つけないといけないよ」と言われたんです。私は愚直なやり方しかできないので、毎日クラス全員に声をかけて結びつきをつくっていきました。そうした経験を重ねることで、タイミングが図れるようになったのかもしれません。

──生徒と理想の関係を築いておられるようにみえます。
下玉先生 本校の生徒は素直で、向き合うことで「自分のことを応援してくれる存在」だと理解してくれるため、このやり方が上手くいっているのかもしれません。以前、走ることが嫌いな生徒がいて、「先生が走るのなら、私も頑張る」と焚きつけてくるので、「一緒に走る」と宣言して伴走したこともありました(笑)。
湯川副校長 生徒が嫌がるのは、教員が誤魔化したり小馬鹿にしたりする態度です。女子は勘がいいのですぐ見抜かれます。反対に下玉先生のようなまっすぐ自分に向き合ってくれる姿によって生徒は心を動かされ、成長していきます。

 

子育てしながら仕事を続けられる職場環境

──仕事と家庭の両立はどうされていましたか。
下玉先生 20代で結婚して、2人の子どもを育てながら教員を続けました。両親にも助けられましたが、それ以上に育英西は仕事と家庭を両立するための産休や育休、育児や介護に関する特別休暇制度が充実しているからこそ可能だったと思います。
湯川副校長 女性が働きやすい職場環境をつくることはマストだと考えていて、教員方には「制度を最大限使って休んでください」と言っています。

──教師になって、自身が成長したと感じることがあれば聞かせてください。
下玉先生 今は教員の相談に対して意見を言う立場なのですが、そこでも「何かありましたか?」と自分から聞く。これは担任時代の生徒への声掛けが基本になっています。それが浸透して若い教員が孤独感を抱えることもなく、何でも言える空気が醸成されてきた気がします。

──先生にとって、仕事のやりがいとは?
下玉先生 私はこどもの頃、近所の子に勉強を教えてあげて喜ばれたというのが原体験で教員をめざすようになったので、やはり生徒が望むことを達成できて喜ぶ姿は何ものにも代えがたいものがあります。最近は若い教員の成長が嬉しいです。「この人はここまでできるんだ!」と感じさせてもらうことも増えてきました。

 

多様化する教育現場で、企業で働いた経験は大きな武器に

──今後、トライしてみたいことがあれば教えてください。
下玉先生 子どもたちも社会人になり、時間に余裕ができたので大学時代にやっていたマンドリンを再開しました。3年前から習い始め、今では団体にも所属して演奏会にも出ています。「この歳になっても挑戦すれば成長できる」という嬉しい発見もあり、教員の仕事とこの活動を長く両立していきたいです。

3年前からマンドリン演奏を再開。生徒の学びを促すだけでなく、自身も学びを続ける。

 

3年前からマンドリン演奏を再開。生徒の学びを促すだけでなく、自身も学びを続ける。

――これから教師になりたい人、私学で働いてみたい人へのメッセージをお願いします。
湯川副校長 私学には独自の教育方針があり、社会を意識した教育実践は間違いなく面白いです。生徒が人格を形成する中で、自己肯定感を高め、「自分はやれる」と思えるためには、教員の熱量と実践力は不可欠です。今後は多様な経験やスキルを持った人材が必要とされると思います。別の仕事についておられたとしても、教育では社会経験が強みとなります。是非その強みを私学で発揮して欲しいです。
下玉先生 私学は学校ごとに「めざすべき教育」を打ち出しているので選びやすく、公立に比べて新しいことにチャレンジがしやすいのもメリットですね。今、教育の内容も大きく変化し、多様な人材が求められています。企業で働いていた経験は大きな武器になるので、臆することなく挑戦して欲しいです。どの仕事もそうですが、教員は人と関わることで、自分が一番成長できていることを感じられる仕事だと思います。

#プロフィール
下玉 利香(しもだま りか)
育英西中学校・高等学校、国語科教諭。生徒一人ひとりに真摯に向き合い続ける指導経験をバックグラウンドに、同校として生徒指導の他にⅠ類の主任及び教育連携校の連携部長を担当。連携協定を結ぶ公私立11大学との関係性も活かしながら、生徒自身が「自分は何をやりたいか」という根源的な問いへ向き合う支援に注力する。
#学校INFO
育英西中学校・高等学校
女子校 高校募集あり
https://www.ikuei.ed.jp/ikunishi/
〒631-0074 奈良市三松4丁目637-1
TEL:0742-47-0688
近鉄富雄駅から
徒歩約20分(登下校時「富雄-育英西校」直通バスあり)。
バス7分(151・152・153・155系統)「二名(にみょう)」下車+徒歩7分。
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