さっくりわかる教育トレンド「リフレクション」
記事更新日 2024.07.30

さっくりわかる教育トレンド「リフレクション」

今回は「リフレクション」について解説します。あまり馴染みのない方も、何となく聞き覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。イチから解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

リフレクションとは

リフレクション(Reflection)とは、直訳すれば「光の反射、音の反響、反省」等の意味を持ちますが、特に昨今注目を浴びているのは、自分の内面を客観的、批判的にふり返る行為を指します。強いて言えば、「内省」が最も近い日本語に相当するでしょう。
こう聞くと誰しもが日常的に行っている行為に捉えられるかもしれませんが、実はリフレクションは経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」の中でも、あらゆるスキル習得の前提として重要な位置づけを与えられています。
改めて目的を正しく理解し、技術を体系的に学んで取り組む(取り組ませる)ことで、当人の主体的な成長や良い動機付けを促進し、結果としては組織にとっても望ましい行動を引き出すことに繋がります。このように、組織の人材開発、人材育成の観点で注目されているリフレクションについて、改めて整理していきたいとおもいます。

 

リフレクションの目的

リフレクションの目的は、「経験を客観視することによって新たな学びを獲得し、未来の行動及び意思決定を良いものにしていく」ことにあります。単純に反省することや、あるいは誰に責任があるのかの犯人捜しを行うことが目的ではありません。つまり、まずは良し悪しと切り離して既に起きてしまったことは今さら変えようがないと受け止める考え方が前提になります。「覆水盆に返らず」あるいは “What is done is done”の精神が重要と言えるかもしれません。その上で、事態の「なぜ」を問うやりとりを経て新たな知見の獲得を目指します。

特に混同の危険性が高いのが、指導者や上司の立場の人が「『なぜ』できなかったのか」「『なぜ』こうなったのか」と事態の責任を追及するやりとりです。同じ「なぜ」を問うやりとりでも、こうした相手の責任を追及するような指導とリフレクションとは性質が異なります。リフレクションは、「当人と目線を同じくし、本質的な原因を考えることで、次の行動改善に繋げる」という視点を持ちます。今後の行動を良いものにすることが第一義ですが、そのための方法も含めたものと考えると分かりやすいかもしれません。

 

リフレクションのポイント

では、リフレクションを行う上でのポイントはどのような点にあるのでしょうか。リフレクションの具体的な方法やメソッドについて、その全て紹介することは本稿内では困難です。リフレクションにおけるポイントを5つご紹介しますので、ぜひ書籍などで学びを深めていただければ幸いです。

経験から学ぶこと

リフレクションを行う上での前提でもあり、最大のポイントの一つでもあります。成功にせよ、失敗にせよ、私たちは「経験したからこそ知っていること」があります。その経験を知恵に変えて、未来の行動・意思決定の改善に繋げることが重要であるという態度を持ちましょう。

自分のビジョンを形成すること

「自分は何を実現したいのか」という視点がなくては、どのように改善すべきか曖昧なものになってしまいます。達成したい目的やビジョンを持ちましょう。ただし、ビジョンは必ずしも立派で壮大なものである必要はありません。等身大のビジョンを掲げ、それをリフレクションの軸と同時に自分の動機の源とすることが大切です。

自らを理解しようとすること

上記「自分のビジョンを形成すること」とも関連しますが、自分を突き動かす大切な価値観や原動力について、少しずつ理解を深めましょう。無意識下に下していた判断や、言語化せずに済ませてきたことに向き合うことで、リフレクションはさらに深化していきます。様々な経験を通じて、自身が喜びを感じる理由、嬉しいと感じる理由を掘り下げていきましょう。

多様な世界から学び自分の世界を広げること

リフレクションを行う上では、自分とは異なる他者を認めることも必要になります。自分の意見がいかに正しいのか、という主張のぶつけ合いではなく、「対話」による学びを通してこそ視野はひろがり、より深く物事を考えられるようになります。意見の背景にある多様な判断基準やものの見方に意識を向けましょう。

過去の学び・成功体験を手放すこと

誰しも、上手くいった方法を踏襲したり、あるいは他の人に推奨したりすることは自然な発想です。しかし特に変化の激しい現代では、あえて経験を通して学んだことを横に置き、違う枠組みや前提で物事を捉えなおすことも求められます。特に行き詰ったときには、この意識的な手放し=「アンラーン」も大きな役割を持ちます。

 

まとめ

今回はリフレクションの目的やそのポイントについて紹介しました。学校現場では、教職員の能力開発や育成という視点はもちろんのこと、生徒指導の視点でも活かすことができます。かつての教師には専門知識や高い授業スキルが重視されましたが、現代ではあらゆる情報に簡単にアクセスできるため、教師の在り方も変わってきています。今後は、生徒に良質なリフレクションをさせることができるような、スキル・考え方・人間性が重視されるかもしれませんね。

(作成:お仕事ジャーナル編集部W)

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