さっくりわかる教育トレンド「エンゲージメント」
記事更新日 2024.08.10

さっくりわかる教育トレンド「エンゲージメント」

今回のテーマは「エンゲージメント」です。社会人の中でも特に人事組織領域を経験されている方であれば、業務において活用されたことがあるかもしれません。昨今、組織を論じる際に重要な位置づけとされる概念について、一つ一つみていきましょう。

エンゲージメントとは

エンゲージメントは「従業員の仕事や組織へのポジティブな心的関係」を指します。エンゲージメントは一般に高低で表現されます。エンゲージメントが低い状態では傍観者意識を持って受動的な業務態度に留まるのに対し、高い状態であれば当事者意識を持った主体的な姿勢が期待できます。
なお、エンゲージメントは従業員を軸として、大きく2つの概念に切り分けることができます。一方は従業員と仕事の間に生じる「ワークエンゲージメント」であり、他方は組織と従業員の関係の間に生じる「従業員エンゲージメント」です。

 

ワークエンゲージメント

元を辿ればシャウフェリ教授(オランダ・ユトレヒト大学)を中心とした研究者たちが提唱した概念で、主に学術界で普及しました。氏は次のようにワークエンゲージメントを定義しています。

『ワークエンゲージメント』
「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である。」

 

従業員エンゲージメント

「ワークエンゲージメント」を発展させ、産業界で取り沙汰されてきた概念です。そのため厳密に定義されているものではなく、多様な意味を内包する言葉として使われます。ポイントとなる違いは、ワークエンゲージメントが「仕事」と「従業員」との関係の間に生じる感情と認知であることに対し、従業員エンゲージメントは「組織」と「従業員」の関係の間に生じるものであるということです。

 

エンゲージメントが高い状態

では、それぞれのエンゲージメントが高い状態では、従業員にどのようなふるまいや活躍が期待できるのでしょうか。いくつかの具体例を示します。

ワークエンゲージメントが高い状態の例

「自らの仕事にやりがいをもち、誇り感じている」
「仕事から活力を得て、活き活きしている」
「与えられた仕事として消化するのではく、熱心に取り組んでいる」

従業員エンゲージメントが高い状態の例

「現在の会社の一員であり続けたいという意思を持っている」
「自社の歴史や環境に愛着を持っている」
「社内での役割や仕事に満足感がある」
「積極的に自らの役割を超えた行動をとる」

このように見ていくと、高いエンゲージメントを保つことの重要性が分かります。続いては一歩踏み込み、企業一般ではなく学校現場に置き換えてみたいと思います。

 

学校現場におけるエンゲージメント

教員も仕事であり、学校も組織であるため、エンゲージメントの概念を適応することが可能です。「ワークエンゲージメント」はともかく、「従業員エンゲージメント」についてはやや違和感がありますので、学校に即して「教職員エンゲージメント」と仮に呼称しましょう。
では、一般企業と比べた際に学校のエンゲージメントにはどのような特徴があるでしょうか。多くの学校現場に伺う中で、次のような共通項があるように思われます。

ワークエンゲージメント:特に、生徒に関するワークエンゲージメントが非常に高い
教員志望の方の多くは、最初から生徒に関する業務のイメージを具体的に持ち、自分はどうなりたいかというビジョンを持っているという特徴があるように思われます。これは一般企業における新入社員の場合とは大きく異なる点です。結果として、高いワークエンゲージメントを保ちながら、自らの生徒指導を中心に自らの仕事に誇りとやりがいを持つ方が多くいらっしゃいます。

教職員エンゲージメント:入職前後のギャップから、教職員エンゲージメントが高まりにくい
多くの学校では、一般企業に比べて採用活動における予算規模は大きくありません。また、人員も十分に割くことは難しいため入職前の相互理解を十分に深めることが難しい可能性があります。担う業務の範囲も多岐に渡るため、入職前には想像もしていなかった業務を行うためかもしれません。このような要因から、教職員エンゲージメントを高めづらいと考えられます。

 

まとめ

「エンゲージメント」という概念を紹介しました。これから学校現場に飛び込もうという皆さんは、面接や模擬授業といった選考を受けていくことになると思います。試験官であり、入職後は先輩となる方々について「エンゲージメント」という観点から考えると、思わぬ発見があるかもしれません。また、働く環境として教職員のエンゲージメントにどのような取り組みを行っているのか、という点も重要です。

(作成:お仕事ジャーナル編集部W)

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