私学のユニーク先生インタビュー「山脇学園中学校・高等学校 小長谷洋介先生」
記事更新日 2024.06.04

私学のユニーク先生インタビュー「山脇学園中学校・高等学校 小長谷洋介先生」

今回は、山脇学園中学校・高等学校の小長谷洋介先生をお訪ねし、現在のお仕事に至るまでの経歴やお仕事のやりがい・面白さについて、お話をうかがいました。

「総合知プログラム」で未来に活躍する人材を育成する

――貴校の特徴や生徒さんについて教えてください。

小長谷先生 山脇学園は、人文・社会・自然科学各分野の視点を融合した、「総合知プログラム」という独自のクロスカリキュラムを編成し、実社会、未来社会での活躍に必要な力を育成する中・高一貫の女子校です。素直で明るい生徒たちも、オープンマインドで新しいことに感度の高い教員陣も、みな個性的で、日頃から活発なコミュニケーションが展開されています。

 

銀行員から高校野球の指導者へ。異色のキャリアを持つ技術科教師

――小長谷先生のご経歴は、とてもユニークだとうかがいました。現職までの歩みを教えてください。

小長谷先生 学生時代はプロを目指したほど、野球に打ち込みました。生まれは東京ですが、野球が縁で青森の大学、地方銀行へと進み、社会人野球でもプレーしました。しかし、度重なるけがで選手としての活動を断念。銀行から一般企業への転職を経て、30歳を前にスポーツビジネスの専門学校での学びなおしを決意しました。学校では、トレーニングやマネジメントまでスポーツビジネス全般を幅広く学びました。その後、大学時代に取得した教員免許を活かしてジョブチェンジ。東京・埼玉・静岡の高校で技術科教員および高校野球の指導者として、約10年間従事しました。

――専門学校に入学される際、職歴が途絶えることに恐れはありませんでしたか?

小長谷先生 普通なら二の足を踏むかもしれませんね。社会の仕組みや生き方の選択肢がいろいろ見えてきた時期でもあり、視野を広げたいと強く思っていたので、あまり不安は感じませんでした。

――女子校の教師としてはかなり異色のキャリアですが、どのようなきっかけで山脇学園に入職されたのでしょうか?

小長谷先生 山脇学園に入職したのは2021年4月です。プロに進んだ教え子もいて、高校野球の指導者としては一定の評価をいただきましたが、40歳を目前にして、野球部の指導者にとどまらず教師としての自分を試したいと考えるようになりました。技術科の教師としてプロフェッショナルを目指したい、という思いが強くなったのです。野球部がない私学を軸に探し始めたところ、当校が技術科教師を募集していました。選考では純粋に「技術科教員」として見ていただき、野球抜きでの採用が決まりました。初めての経験でうれしかったですね。

――男子校から女子校への赴任に、ギャップは感じませんでしたか?

小長谷先生 たしかに文化や空気感は違いますが、どんな生徒も「人」であることに変わりはありません。誰に対しても自分の価値観を押し付けずに相手を認めるという、「人として大事なこと」を忘れなければ大丈夫だと思って着任しました。実際にその通りでした。

 

「なぜ」「どうして」を考える、探究のきっかけを促す技術科の授業

――小長谷先生の担当授業についてお聞かせください。

小長谷先生 私が担当する技術科は、本質的な「問題解決能力」を育みます。具体的には、モノづくりを通して、課題やニーズに対し「なぜ(Why)」「どうしたら(How)」を考える授業を行います。例えばロボットの組み立て実習では、理論上「こうすれば動くはず」だが、実際にやってみると動かない。いくらデジタル化が進んでシミュレーションできても、実践ではうまくいかないことがあります。そこから「なぜ」と問いを立て、理由を考え、試行錯誤しながら解決法を探ります。
初めから正解があるものではなく、「やって気づく、動いて分かる」のが技術科の授業で、まさにSTEAM教育(※注1)です。実社会ではシミュレーションできない変数も多く、理屈通りに進まないことが珍しくありません。そのような壁にぶつかっても、解決できる力を育んでほしい。そのために、授業を通じて「なぜ」「どうしたら」を考えるクセを身につけるよう工夫しています。気になったことを自分で考えたり、何とかしようと追究・探究したりする気持ちが生徒に芽生えることを期待し、あえてモヤモヤを残して授業を終えることもあります。

※注1)STEAM教育:科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念。知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す分野横断的な学びであり、体験の中でさまざまな課題を見つけ、クリエイティブな発想で問題解決を創造、実現していく手段を身につける教育。

校内ロボットコンテストの様子

計算通り動かないロボットに対して、試行錯誤する生徒たち

夏休みには『自由研究フェスタ』で、小学生のプログラミング体験をサポート

――先生が働くうえで大切にしていること、仕事のやりがいについて教えてください

小長谷先生  「名刺なしに自分をどう語れるか」という価値観を、大切にしています。肩書によりかからず、自分を語れる人間でありたい。それは生徒に対しても同様で、個人のスキルやマインド、アイデンティティを大切にしています。そのうえで、私自身は誰かの成長や変革によい影響を及ぼす存在になりたいと思っています。生徒たちがプラスの人生を選択することに貢献できる、教師の仕事そのものが私のやりがいです。

 

先生方の学びのサポートや自分の成長につながる活動で、毎日が充実

――今後、組織で力を発揮したいことや、やりたいことを教えてください。

小長谷先生 山脇学園では、生徒たちに多彩な学びの機会を提供できるよう、SSH(※注2)の取得に力を注いできました。私も入職時からプロジェクトに参加し、理系教科を中心とした先生たちと協力しながらさまざまな取り組みを続けた結果、2024年度よりSSH指定校となりました。生徒たちがいろいろな経験を積めるようになり、私たち教師もワクワクしています。
同時に、教員も自ら学びを深めなければなりません。私には、教員研修担当として、研修プログラムやコンテンツを開発する役割もあります。集合型の研修や、遠隔やアーカイブでも学べる動画コンテンツの提供、希望者を募って最新トピックスをテーマに開催する勉強会など、すべての教員に学びの機会を提供できるよう、研修体制を整えています。新たな学びに対する先生方の興味・関心に手ごたえを感じ、研修開発にもやりがいを感じています。

※注2)SSH(スーパーサイエンスハイスクール):文部科学省が平成14年度より開始した、科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度。SSHでは、理科・数学等に重点を置いたカリキュラムの開発や、大学等との連携による先進的な理数系教育を実施する。

校内で様々なコンテストがあり、頑張ったチームには小長谷先生特製のオリジナル時計などが贈られることも

――先生ご自身がスキルアップのために行っている活動があれば教えてください。

小長谷先生 STEAM教育の実践に向けて他の学校に調査に出向いたり、技術科教員の外部コミュニティに参加して情報共有したりしています。領域の垣根を越えて、自分たちが得た最先端の情報を共有し合う場にいると、とても刺激を受けます。
教員活動では体験できない経験、知見も大切にしています。私は、「一般社団法人 野球まなびラボ」の理事を務めていますが、ここにはスポーツ業界だけでなく、大学教授や企業人も参加しています。理事会には、毎回勉強しに行く気持ちで出席しています。人の成長にも大いに興味があるので、「人材育成学会」に所属し、学びを深めています。視野を広げ視座を高める。自分を成長させるには、校外のコミュニティに参加、所属することも重要だと思います。

――とてもアクティブな小長谷先生ですが、日々どのようなスケジュールで働いていますか。

小長谷先生 遠方のため、平日は5時起床で、7時半までに学校に到着するよう家を出ます。8時から17時半までが学校での勤務時間です。この中で授業やその準備、事務処理、SSHや研修関連の仕事などを効率的に行い、18時には学校を出るようにしています。
通勤時間や休日には、調べ物をしたり、動画教材を見たり、外部のコミュニティと情報交換をしたりします。常に仕事につながる活動をしているので、プライベートとの境はあいまいですが、すべて自分の興味・関心ごとに時間を費やした結果で、まったく苦ではありません。

 

生徒の成長とともに、自身のヒューマンスキルも高められる私学というステージ

――一般企業に就職してから教員を目指したいという方や、私学で働いてみたいという人へのメッセージをお願いします。

小長谷先生 教育現場はすべてがライブです。ましてや人と接する仕事ですから、イレギュラーが他の業界よりも起きやすい。野球でいえば変化球を打つのがうまい人、想定外のことが起きても「今日はこう来たか!」と楽しめる人に、教員は向いていると思います。
毎日、100人単位で生徒や先生との交流があり、それぞれの感情や考え方に触れるため、ヒューマンスキルはおのずと向上します。今もし銀行マンに戻ったら、現役のころよりできることがあるのでは、と思えます。人生とは、自分の人間力を高めること。そう考える私にとって、生徒の成長とともに、自分自身の人間力を高められる私学の環境は、最高のステージです。

 

#プロフィール
小長谷 洋介(こはせ ようすけ)
幼いころから野球に打ち込み、野球で進学した大学を卒業後は、金融機関や製造業などの一般企業に勤める。その後専門学校でスポーツビジネスを学び、取得していた工業科の教員免許を活かして30歳で教員にジョブチェンジ、高校野球の指導者となる。2021年4月より、技術科教員として山脇学園に入職、現在に至る。
#学校INFO
山脇学園中学校・高等学校
女子校・中高一貫校・高校募集なし
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